雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
氷に関する最近の分子動力学シミュレーション
水分子,水,および氷の原子間ポテンシャルモデル
河村 雄行
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1996 年 58 巻 4 号 p. 339-342

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抄録

1970年代初めに出現した水分子の相互作用モデルは,溶融塩のための分子シミュレーション手法の出現とともに,それまでほとんど「統計物理学の実験手法」のみとして位置付けられていた分子動力学法とメトロポリス・モンテカルロ法のユーザーを広く化学とその応用分野に拡大した.最近では,バルク状態の純粋な水や氷だけでなく,膜と気相の系や水中の電極表面など,あるいは超臨界状態を含む高温高圧下の水や氷,電解質や有機分子の水溶液などにも適用されている.水の分子・原子間相互作用モデルは,初期の経験的剛体分子モデルから(黎明期:BNS,ST2),分子軌道法を用いた第一原理的剛体分子モデルを経て(発展期:MCY,CC),最近では,再現性が優れていることから,再び経験的モデルが多用されるようになっている(充実期(回帰):TIPS,TIP4P).また,剛体分子としての取り扱いから,内部自由度を持つモデル(剛体分子からの発展と中心力での構成の2種がある),さらに全自由度を持つモデルへと発展してきた.

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© 公益社団法人 日本雪氷学会
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