雪氷
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新潟県における人身雪害のリスク分析
上村 靖司
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2003 年 65 巻 2 号 p. 135-144

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抄録

新潟県における降積雪現象に起因する人身雪害について,46冬季に亘る死傷者数データから,年代ごとのリスクの推移を分析した.また,1985~2001年の16冬季の事故記録から,リスク分析と要因分析を行った.得られた知見を要約すると以下のとおりである.
(1)1985~86豪雪以降の暖冬小雪傾向にも関わらず,人身雪害のリスクは最近高まってきている.最近数年間の平均で見ると,新潟県で年間に127人が事故に遭い,そのうち16人が死亡している.(2)1987年以降は,低頻度大規模な人身雪害のリスクは大幅に低下しているが,平年並みといわれる高頻度小規模な人身雪害の死亡リスクはほとんど変化が無く死傷リスクはむしろ増加している.(3)最近の16冬季に起きた事故は,高所からの転落が64%,落雪・落下物が11%,除雪機が15%を占める.致死率は,種類別では水路転落と発病,年齢別では70代以上,時間帯では19時~21時に高い.(4)全事故の97%が県人口の43%が居住する地域で起こっている.山村豪雪地域における個人的死亡リスクは1.8人/(年・10万人)と交通事故と同等,労働時間当たりのリスクでは労働災害の16倍である.(5)気象因子別のリスクは,気温が低いほど,降雪が3日で1m以上,7日で1.5m以上あったとき高くなる.(6)1980年代と1990年代の比較の結果,明らかな事故被害者の高齢化と若年被害者の増加が見られた.種類別では,高所からの転落,落雪・落下物,除雪機と転倒が増加した.また,除雪作業中の発病が1995年以降顕在化してきている.

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