雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
雪試料の誘電的性質における経時変化と温度特性
竹井 巖
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 65 巻 6 号 p. 511-522

詳細
抄録

雪試料の誘電的性質を,その経時変化と温度特性について示す.使用した雪試料は,-20℃の冷凍庫に保管していた保存雪または霜をふるいでほぐして試料セルに詰めたものである.雪の誘電的性質を50 Hzから5 MHzの周波数範囲,-15℃から-0.3℃の温度範囲で調べた.-1℃付近で焼鈍した場合,雪試料の誘電分散強度(静的誘電率)と低周波電気伝導度が時間とともに増加することが観察された.これらの経時変化は,試料内部の氷粒子間結合の成長に対応するものと考えられる.水分子配向に起因する誘電分散の-10℃での緩和時間は,氷の場合の10分の1程度に短い値を示した.また,誘電分散はCole-Cole図においてつぶれた形をしており,緩和時間が分布している傾向を示した.高周波数側への緩和時間の分布は,雪試料内部の氷表面の存在が,その表面付近の水分子の配向挙動を容易にしているとして説明できる.低周波電気伝導度には,雪試料内の氷粒子表面を流れる表面電気伝導成分が大きく寄与しており,-6℃程度以上で疑似液体層の影響によると考えられる増加も認められた.また,低周波電気伝導度(例えば100 Hzでの値)に融点近傍-2℃付近でピーク現象が認められた.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本雪氷学会
次の記事
feedback
Top