環境科学会誌
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一般論文
実走行車からのベンゼン排出量の測定と沿道高濃度地点のスクリーニング
石 世昆樋口 澄洋加賀 昭和近藤 明井上 義雄梅本 憲一
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2009 年 22 巻 5 号 p. 336-347

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抄録
幹線道路沿道において,自動車排ガス由来のベンゼンが高濃度となる可能性が高い地点を抽出する手法を提案した。まず,車載型排ガスサンプリング装置を用いて,走行中の車の排気口から直接排ガスをサンプリングすることにより,ベンゼン排出量を直接測定し,排出係数を年式の関数として推定することで,現在走行中のガソリン車からのベンゼン排出係数の平均値を算定した。つぎに,道路・建物形状をいくつかのパラメータで表す沿道空間モデルを仮定し,それに対して数値流体シミュレーションを行うことで,沿道ベンゼン濃度を各パラメータのべき乗積であらわす近似式を導出した。さらに,大阪市内150の幹線道路沿道(総延長173km)でのベンゼン濃度を近似式により推定することで,高濃度となる可能性のある地点をスクリーニングした。平日昼間のベンゼン濃度平均値が10μg/m3を超える可能性のある地点は全地点のおよそ2%であった。本報で用いた沿道空間モデルは形状を大胆に簡略化しており,必ずしも各地点ごとの実情を反映していないが,スクリーニングされた地点は高濃度となる可能性の高い地点であり,これらの地点の沿道空間形状を航空写真などにより精査することで,高濃度となる可能性のより高い地点を絞り込むことができると考えられた。
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© 2009 社団法人 環境科学会
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