環境科学会誌
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一般論文
鉄粉による3種のクロロエチレン類の還元的脱塩素反応の速度と経路に及ぼす各種界面活性剤の影響
アイヨウブ サメー稲葉 一穂岩崎 一弘土井 妙子内山 裕夫
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2010 年 23 巻 1 号 p. 18-30

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抄録

鉄粉によるクロロエチレン類の脱塩素還元分解反応の速度と経路に及ぼす界面活性剤の影響を明らかにするために,2種類の陰イオン性界面活性剤(直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS),ドデシル硫酸ナトリウム(DS)),1種類の陽イオン性界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウム臭化物塩(CTMA))および2種類の非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(B35),ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(B58))が溶存する溶液中でのテトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE),シス-1, 2-ジクロロエチレン(c-DCE)の分解反応を詳細に測定した.いずれの界面活性剤溶液においても3種のクロロエチレンの中で,c-DCEが最も分解速度が遅く,鉄粉表面への吸着量が少ないことが関与するものと考えられた。TCEとPCEの分解速度は純水中およびLASとDS溶液中ではPCEが速いが,CTMAとB35,B58溶液中では分解速度に大きな差は見られなかった。出発物質および分解生成物の濃度と反応時間の解析から,分解反応はβ-脱離と水素化分解の2つの反応機構が同時に進行していることが考えられ,その比率を得ることができた。陽イオン性および非イオン性界面活性剤溶液中では水素化分解反応の寄与が小さく,純水中および陰イオン性界面活性剤溶液中では水素化分解反応による分解が大きくなることが明らかとなった。また,TCE,PCEいずれの分解反応においてもβ-脱離反応の速度定数は水素化分解反応の速度定数に比べて変動が小さく,全分解反応速度の差異は水素化分解反応の大きさに影響されると考えられる。

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© 2010 社団法人 環境科学会
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