環境科学会誌
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一般論文
過熱水蒸気を用いたメタン発酵汚泥の熱分解における炭素および窒素バランス
銭 慶栄望月 和博迫田 章義
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2010 年 23 巻 1 号 p. 31-41

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抄録
枯渇性資源の消費を抑え,また地球温暖化の防止を図るなどの観点から,化石代替燃料としてバイオマス資源の利活用が注目を集めている。しかし,窒素含有率の高いバイオマスのエネルギー変換およびその利用は,環境問題を引き起こす可能性がある。本研究では、過熱水蒸気熱分解(SSP)技術を用いて,本研究グループが持っているメタン発酵実証プラントから発生している窒素含有率の高い固形廃棄物―メタン発酵汚泥(MFS)の炭化物への転換を試みた。その上で,MFS転換プロセスにおける炭素および窒素収支を検討した。その結果,過熱水蒸気の温度が300℃および350℃の場合には,炭素および窒素の収支がつり合ったが,400℃では大きな差が生じた。MFSの脱水および脱アンモニアの反応は主に300℃で起こる一方,タールおよび低級炭化水素が主に400℃で発生することが明らかになった。MFS中の窒素はTar-NおよびNOx-NよりNH3-Nに転換しやすいことが判明し,SSPは窒素含有率が高いバイオマスに対する環境に優しい転換技術であることが判った。MFS由来の炭化物の高位発熱量は,350 ℃では13.3 MJ/kg, 400 ℃では11.4 MJ/kgとなった。この値は商品石炭の24-31 MJ/kgより低いが,MFS由来の炭は石炭と混合して燃料として利用することができると期待される。
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© 2010 社団法人 環境科学会
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