環境科学会誌
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一般論文
太陽電池の3R評価モデルの構築
瀧口 博明森田 一樹
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2010 年 23 巻 2 号 p. 81-95

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抄録
持続可能な社会に向けて,低炭素化に対応した高機能マテリアルの高次元の3Rsが必要となっている。高次元の3Rsとは,高機能マテリアルの製造工程での投入原単位とライフサイクルにおける環境負荷のリデュース(Reduce),製造工程で発生する規格外品や使用済品のリユース(Reuse)とリサイクル(Recycle)を意味する。本稿では,高機能マテリアルの一例として,太陽電池用の多結晶シリコン(Si)を対象に,その高次元3Rsを実現するための要件を明らかにした。多結晶Si型太陽電池は,変換効率とコストのバランスのよさから最も普及が進んでいるが,需要の拡大を受け多結晶Siを持続可能な形で確保することが課題となっている。現在,太陽電池用多結晶Siの多くがエネルギー多消費型の方法で製造されており,多結晶Si製造時のエネルギー投入量や太陽電池に用いるSi投入量の原単位のリデュース(削減)が求められている。本研究において,使用済太陽電池のモジュールをリサイクルする場合,回収されたSiを多結晶Si製造工程の後に投入することが望ましいことが,エネルギー投入量・CO2排出量の分析結果により明らかになった。また,太陽電池モジュール全体の価格が一定との仮定を置いて,モジュールのセル部分の価格が変換効率の一次関数で表される評価モデルを構築し,現状のデータを用いてその妥当性を検証したところ,±20%の誤差の範囲内で適用可能であることが示された。このモデルを用いて2020年における太陽電池モジュールのリユース・リサイクルの可能性を検討した。その結果,太陽電池モジュールを20年後にリユース・リサイクルする場合,市場競争力を有するためにはモジュール価格を新品時の4割以下に設定することが求められることがわかった。
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© 2010 社団法人 環境科学会
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