抄録
近年,中国の経済は,従来の外需主導型経済からインフラ建設を中心とする内需型へ転換しつつある。インフラ建設投資の水資源多消費型・汚水多排出型産業への波及効果により直接的・間接的な水利用が増大し,さらには水環境に大きな影響を与える可能性がある。このようなインフラ建設投資と水利用および水環境の関係を把握することは非常に重要であると言える。ゆえに,本研究ではまず,産業別の用水量・汚濁負荷排出量の原単位を収集・整備することによって,インフラ建設投資の影響を把握できる水資源産業連関表を構築し,インフラ建設投資の生産誘発効果を分析した。さらに,用水量,汚水排出量,CODなどの汚濁負荷排出量の指標を用いて,水資源に対するインフラ建設投資の影響を評価した。この結果から,インフラ建設投資の生産誘発額が都市家計消費や輸出に匹敵する規模であり,経済発展の主要な牽引力であることが分かった。また,インフラ建設投資によって誘発される産業別の用水量および汚濁負荷排出量は,いずれも,農林水産業で圧倒的に多いことが分かった。それ以外にも,誘発される用水量の多い部門は電力・熱水生産供給業,鉄鋼業であることが判明した。さらに,CODの負荷排出量については製紙と紙製品製造業の誘発量が多いことが分かり,NH4の負荷排出量の場合は肥料生産を含む化学原料と化学製品製造業において多いことが明らかになった。そのため,このようなインフラ建設投資によって誘発の影響を受ける産業では,用水効率を向上するとともに汚濁負荷排出量を削減することが重要であると考えられる。