環境科学会誌
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一般論文
漂着ライターの地名情報からみた民生分野からの海域ごみの排出地
岡野 多門安東 重樹安本 幹
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2011 年 24 巻 6 号 p. 521-530

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抄録

漂着ライターを鳥取県の複数の砂浜で2004年4月から繰り返し調査し,それらの由来地域を調べた。撤去した総数は27,968個で,印刷文字からそれらの27%の排出由来地域を同定した。日本,朝鮮半島,中国・台湾に由来するライターの個数比は約6:11:10である。しかし同時に調査を行った水・清涼飲料用ペットボトルの由来地域個数比は約6:2:1であった。この由来地域比率の著しい相違は消費量の違いだけでなく,日本に比べて朝鮮半島や中国および台湾での印刷文字入りライターの消費率が高いためと推測された。ペットボトルと異なり,ライターを投棄する時期の偏りは小さいが,両者の漂着時期は似ている。ただし排出地によって海への流出や漂流経路が異なることから,由来地域によって漂着時期が異なる。したがって由来地域別漂着量の測定には漂着時期の相違を考慮した適切な時間間隔の定期調査の継続が必要で,由来地域別漂着量の比較は文字入りライターの使用状況の近い地域に限って可能である。このような調査分析によって,韓国の黄海側からの日本海への流入が少なく,日本海に流入できる日本の南西限界が長崎県付近で,また対馬海流に逆行する漂流が少ないことが分かる。また日本の都道府県まで帰属できたライターの68%が鳥取県由来で,それらを鳥取県の東部,中部,西部の3地域由来に分けると,各地域由来ライターの67-88%が同じ地域内の調査海浜に漂着していた。これらの結果は,河口から流出したライターが直線的な海岸地形でも,沿岸域にとどまる傾向の強いことを示す。沿岸域にとどまりやすい現象とライターの詳細な地名情報を組み合わせることで,狭い地域からの民生由来ごみの排出量の比較や,ごみ流出防止策の実効性を評価することが可能である。ただし狭い地域間の比較を行う場合は,人の往来によるライターの印刷地名と投棄地の乱れを確認することが必要である。

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