環境科学会誌
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一般論文
産業連関表を用いた重量単価の最適化モデルの開発と神奈川県のマテリアルフロー分析への応用
橘 隆一近藤 浩正荒川 正幹後藤 尚弘船津 公人藤江 幸一
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2012 年 25 巻 2 号 p. 134-150

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抄録

産業連関表に基づいた都道府県単位のマテリアルフロー分析(MFA)を行うには,産業連関表の各品目について適切な重量単価の原単位を計算し,産業連関表の金額ベースの単位を重量ベースに変換しなければならない。全ての品目について都道府県単位で統計資料が存在するわけではなく,また地域や年代によって重量単価が異なるため,これらの数値を適切に設定することは簡単ではない。このため,品目別国内生産額表から推定した重量単価を初期値として,より適切な値を求めるための手法の開発が必要とされている。そこで我々は,重量単価を設定することで産業連関表から各品目の生産量および廃棄物量を推定した値と,他の統計資料から得られる生産量および一般廃棄物処理実態調査等から得られる廃棄物量とを比較し,その差が最小となるような重量単価を,コンピュータによって半自動的に設定できる最適化モデルを開発した。さらに,この最適化した重量単価を用いて神奈川県のMFAを行った。その結果,神奈川県では,投入される資源の半分近くを原油・天然ガスが占めていることがわかった。投入される原油・天然ガスの多くは,第一次,第二次産業,サービス業,一般消費で消費され,移輸出量の9割以上を石油製品が占めていた。第一次,第二次産業の原料は,移輸入(資源)に依存していると考えられ,移輸出入バランスも減少していたことから,特に1980年から1985年の間に輸出産業中心の経済に転換し始めたと考えられた。炭酸ガスを含めた廃棄物等の発生量は,20年間でおよそ1/4に縮小した。これは,県外,海外に工場を移転することにより本来排出されていた廃棄物が減少したことや,1993年の環境政策にもとづき,廃棄物問題を中心とした環境問題への取り組みが進んだことが影響したと考えられた。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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