環境科学会誌
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一般論文
臭素系難燃剤ヘキサブロモシクロドデカンの曝露評価
-各種曝露媒体を考慮した経年的検討-
岩田 智秀中井 里史
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2012 年 25 巻 4 号 p. 296-307

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抄録
ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は主に断熱材や繊維コーティング剤に使用されている臭素系難燃剤である。今後,ストックホルム条約に基づき世界各国で使用が制限される可能性がある。本研究では職業曝露のない国内在住の日本人成人集団を対象として,HBCDへの曝露量を総合的に評価することを目的とし,種々の経路や経年的な変化を考慮に入れた曝露評価を行った。まず,物質フロー解析による1985年から2030年までの日本のHBCD環境排出量に基づき,多媒体環境動態モデルを用いて,環境媒体(大気,土壌,表層水,底質)中HBCD濃度を推計した。次に,各環境媒体中濃度に基づき,曝露媒体(屋外大気,自動車内空気,建物内空気,ハウスダスト,葉菜,根菜,肉類,乳製品,魚介類,水道水)中濃度を推計した。最後に,各曝露経路(吸入,経口,経皮)を通じたHBCD曝露量を,各曝露媒体中濃度に基づいて推定した。HBCD曝露量は1986年から上昇が見られ,2011年に最大値4.8 ng/kg BW/day(吸入:0.33 ng/kg BW/day, 経口:4.5 ng/kg BW/day, 経皮:1.4×10-8 ng/kg BW/day)を示し,その後徐々に低下すると推計された。
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© 2012 社団法人 環境科学会
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