環境科学会誌
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一般論文
適応策のための資金供与制度
-南太平洋島嶼国の比較-
森田 香菜子
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2012 年 25 巻 5 号 p. 347-366

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抄録

開発途上国における気候変動の悪影響は今後深刻化することが予測されている。しかし,途上国には気候変動への適応策を実施するための十分な資金や技術がない。途上国への適応策支援の問題は,適応策に関する制度設計の議論の中で主要な争点の一つとなっている。本研究は,気候変動に対して脆弱な途上国の適応策を推進する,効果的でパフォーマンスの高い資金供与制度を探究する。(1)国際政治学と開発金融学の理論を基に構築した,適応策支援を目的とした既存の資金供与制度の効果やパフォーマンスを評価する新しい分析枠組及び分析軸,(2)気候変動に対する脆弱性の度合いが異なるサモアとツバルの事例研究,の二つの研究アプローチを用いた。研究の結果,適応のニーズ,国内事情,ドナーとレシピエントの関係の違いにより,適応策推進に効果的なドナーとレシピエントの組み合わせは,サモア及びツバルで異なることが明らかになった。本研究は,適応策の資金供与制度の構築において,途上国の適応のニーズや国内事情,資金供与制度の特徴を考慮する必要性を示した。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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