環境科学会誌
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シンポジウム論文
地域に根差したCO2削減策がもたらす地域経済・雇用の活性化に関するケーススタディ
杉山 範子渡邉 聡竹内 恒夫
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2012 年 25 巻 5 号 p. 391-396

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抄録

本報告は,CO2削減策を全国ベースのものと地域ベースのものに分類し,どちらを重点的に実施することが地域経済・雇用創出に効果をもたらすかを検証し考察したものである。
わが国において展開されているCO2削減策および実現可能性のあるCO2削減策について,全国ベースのもの,すなわち国の政策等により全国一律の措置があるものと地域に根差した削減策に分け,これらを組み合わせて,愛知県を対象に2030年における1990年比マイナス40%の2つのロードマップ(RM-1(全国ベースのCO2削減策中心),RM-2(地域ベースのCO2削減策中心))を作成した。さらに,RM-1とRM-2について,それぞれの削減策の導入量ごとの投資額等を求め,「地域気候政策・経済分析モデル」(平成22年度環境経済の政策研究「自立的地域経済・雇用創出のためのCO2大幅削減方策とその評価手法に関する研究」で開発したモデル)を用いて経済効果を予測した。この結果,地域ベースの削減策を中心にしたRM-2が,全国ベースの削減策中心のRM-1よりも,2030年の県内総生産では約7兆円大きく,2030年の雇用者数では約6~9万人多くなり,地域に根差したCO2削減策が地域経済や雇用創出に効果的であることが明らかになった。RM-1は消費支出が中心であるのに対し,RM-2は設備投資が中心であることから,直接的に愛知県内の生産・企業活動の喚起に結びつくと考えられる。したがって,「地域の設備投資型CO2削減策」の導入は,地域のCO2排出削減に寄与するだけでなく,県内総生産の拡大・雇用創出をもたらし,地域の環境と社会・経済に貢献しうると考察した。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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