環境科学会誌
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総合論文
食品製造業におけるゼロエミッション活動の評価
張 世峰山本 佳世子和泉 潤
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2013 年 26 巻 2 号 p. 101-117

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抄録

本研究は食品製造業を対象として,評価の枠組みを構築するとともに評価方法を提案した上で,定量的にゼロエミッション活動の評価を行い,問題点を明らかにすることを目的とした。評価対象業種として,ビール類製造業,調味料製造業,精穀・製粉業を選定した。評価の枠組みとして3 つのカテゴリーをあげ,各カテゴリーの評価指標を設定し,先行研究の成果およびアンケート調査結果を基に配点した。評価方法は,DEA による業種別の評価を行った上で,主成分分析を用いて評価対象全体の評価を行うものである。
本研究の結論は,以下の2 点に要約することができる。
(1)DEA のCCR モデルによる業種別の評価結果から,各業種の製造プロセスの効率性を明らかにした上で,DEA効率値を用いて平均値を基に分類することができた。また,ビール類製造業の工場個別型のゼロエミッション活動を行う2 社と精穀・製粉業は工場ごと,ビール類製造業の企業統一型のゼロエミッション活動を行う2 社と調味料製造業は企業ごとに効率性の差異が認められた。効率値が平均未満の工場は,3 業種ともに50%程度を占めており,ゼロエミッション達成工場も該当していた。
(2)評価指標の配点結果を基に,順位付けおよび主成分分析を適用した評価対象業種全体の評価結果から,評価対象業種の45 工場は8 段階に分類することができた。さらに,主成分分析を適用して考察した結果から,45 工場を4 つの集合に分け,集合・工場ごとに問題点を明らかにした。ビール類製造業の工場はすべて先進的な集合と積極的な集合であるが,調味料製造業の工場は約83%が非効率的な集合と消極的な集合,精穀・製粉業の工場は約75%が非効率的な集合と消極的な集合であった。

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© 2013 社団法人 環境科学会
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