2013 年 26 巻 2 号 p. 118-127
森林環境税の必要性判断に係る意思決定プロセスを,森林環境税評価およびHSM(ヒューリスティック・システマティック・モデル)に係る既往研究を踏まえて新たなモデルを設計し,社会調査の結果を用い,共分散構造分析により定量的に明らかにした。加えて,地域の森林や森林環境税への関心水準の高低が,意思決定プロセスに与える影響の違いを,多母集団同時分析により検証した。
結果,森林環境税の政策効果と森林行政への信頼が,森林環境税の必要性に係る直接の判断要因になること,ヒューリスティック処理(森林行政への信頼)よりも,政策効果としてのシステマティック処理のほうが,森林環境税の必要性判断への影響力が大きいこと,森林環境税導入手続きの公正さが,森林環境税の政策効果および森林行政への信頼に影響を与えることで,間接的に森林環境税の必要性判断に寄与することが示された。加えて,居住県の森林環境税の認知水準と,地域の森林への関心水準(森林ボランティア活動への参加水準)が異なるグループの比較分析により,低認知群および低行動群は,高認知群および高行動群に比べて,相対的に森林行政への信頼要因の影響が大きくなること,高認知群および高行動群は,そもそも森林行政への信頼は森林環境税の必要性判断要因にならないことを明らかにした。