環境科学会誌
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シンポジウム論文
気候要因が農作物貿易に与える影響に関する実証分析
-小麦,米,トウモロコシのケーススタディ-
日引 聡鶴見 哲也馬奈木 俊介花崎 直太
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2013 年 26 巻 3 号 p. 278-286

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抄録
本稿では,主要な農作物である小麦,米,トウモロコシを対象に,重力モデルを二国間の相対貿易に適用し,二国間相対輸出モデルを構築し,パネルデータを用いてパラメータ推計をし,実質GDPや気候条件がこれらの相対貿易に与える影響を分析した。得られた主要な結論は,(1)輸出国及び輸入国の実質GDPの増加は,輸出量を増加させる。特に,米に比べて,小麦とトウモロコシの輸出に対する影響が大きい。(2)輸出国の気温上昇は,小麦の輸出を減少させるが,米とトウモロコシの輸出を増加させる。(3)輸入国の気温上昇は,小麦,米,トウモロコシの輸出(輸入国にとっての輸入)を減らす。(4)(2)と(3)の結果,世界全体で気温が3℃上昇した場合,小麦では,8.91%輸出が減少し,米では,1.13%輸出が増加し,トウモロコシでは,0.15%輸出が減少する。(5)輸出国の降水量増加は,小麦とトウモロコシの輸出を減少させるが,米の輸出を増加させる。輸入国の降水量の増加は,小麦の輸出(輸入国にとっての輸入)を減少させるが,米とトウモロコシの輸出を増加させる。(6)この結果,世界全体で10%の降水量増加(97mm/年)による輸出への影響は,小麦の場合,2.25%輸出減,米の場合,0.84%輸出増,トウモロコシの場合,3.15%の輸出増となる。
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© 2013 社団法人 環境科学会
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