環境科学会誌
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シンポジウム論文
農作物の栽培を想定した放棄地および休耕地におけるバイオ燃料の潜在性評価
萩原 健介石田 裕之花崎 直太鼎 信次郎
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2013 年 26 巻 3 号 p. 287-296

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抄録
再生可能エネルギーや温室効果ガス排出削減等の関心から,バイオ燃料が注目される一方で,食料との競合等の懸念もあり,早急にバイオ燃料の潜在性について評価される必要があるが,その研究が十分ではない。これまでの筆者らの研究では,世界のバイオ燃料のポテンシャルの上限値は約1120EJであると推定されていたが,この推定値を求める際には高地やサバンナなどに代表される,バイオ燃料の栽培には適さないと考えられる土地の利用も想定されていた。そこで本研究では,バイオ燃料作物の栽培地としてより現実的である放棄地および休耕地を対象として,世界のバイオ燃料ポテンシャルの推定を行った。その結果,放棄地および休耕地におけるバイオ燃料ポテンシャルを237EJと推定し,これは世界の一次消費エネルギーの約47%に相当する。加えて,先行研究の結果との差である約880EJのうち,ほとんどが栽培地の違いに由来し,果たして人類が実際にどれだけバイオエネルギーを享受できるかは,これまで作物の栽培が行われてこなかった土地を,どの程度利用するかに大きく依存することが明らかとなった。また,放棄地の劣化土壌の影響を考慮した場合,放棄地のバイオ燃料ポテンシャルが128EJから24%減少した97EJになるという結果から,実際の放棄地のバイオ燃料ポテンシャルは97-128EJの間に位置していると結論づけた。
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© 2013 社団法人 環境科学会
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