環境科学会誌
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一般論文
1971年から2011年の渡良瀬川河川水の高濁度時における濁度,懸濁物質及び重金属濃度の推移
齋藤 陽一森 勝伸角田 欣一板橋 英之
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2013 年 26 巻 4 号 p. 345-356

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抄録

本研究は,渡良瀬川赤岩地点から取水する元宿浄水場原水の濁度が台風等の影響によって100度を超える,いわゆる高濁度時での原水の濁度,懸濁物質(SS)及び重金属(銅,亜鉛,ヒ素,鉛)濃度の推移並びに相互の関係から相関関係を見出し,渡良瀬川水系の環境変化について考察した。本論文では,1971年から2011年まで28回発生した台風,集中豪雨等を原因とする高濁度時において,2時間おきに実施された水道原水の水質検査結果から,各高濁度発生時での最大濁度当りの重金属濃度が経年変化に伴い半減していたことを示す。高濁度時での各重金属濃度と濁度との相関は,毎日検査で行われた平水時の重金属濃度と濁度の相関と比べて強く,経年変化に伴いその相関を維持しながら減少していた。また,渡良瀬川における高濁度時の重金属の流下特性は,足尾鉱山廃棄施設堆積物である廃石,精錬カラミ等に由来していることが推定され,その濃度は様々な行政施策によって確実に減少していた。これより,高濁度時においても水質が改善傾向にあり,本研究を通して河川高濁度時における水質管理の有効性が示された。

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© 2013 社団法人 環境科学会
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