環境科学会誌
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一般論文
豚尿液肥を利用した水稲栽培の経済的価値
金澤 伸浩嶋崎 善章小川 敦史金田 吉弘佐藤 寛子鈴木 人志佐々木 浩一
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2014 年 27 巻 6 号 p. 354-361

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抄録

養豚場で発生するし尿由来の排水は,特に硝酸性窒素類を多く含むことから適切な処理が必要であるが,排水処理にかかる費用負担の大きいことが課題になっている。そこで,環境保全と排水処理費用の負担軽減を両立させるために,養豚場の排水を簡易曝気処理により液肥化して水稲栽培に用いる資源循環システムの確立を目指した。本稿は,製造した液肥(豚尿液肥)で水稲栽培を行う実証実験を行い,特に経済的な観点から評価した結果を示した。豚尿液肥を水稲栽培に使用した場合,化学肥料を用いる場合と比べて,肥料の効き方や早さに違いが見られたが,概ね同等の収量が得られる事が明らかになった。化学肥料の代わりに豚尿液肥を用いることで,耕種農家は10aあたり約2千円のコスト削減が可能である事が明らかになり,豚尿液肥を水稲へ利用する循環システムは経済的に持続可能と考えられた。またアンケート調査の結果,豚尿液肥で栽培した米に対する印象は良好で,平均7.6%の付加価値がつき,10aあたり約7千円の経済的効果が期待されることが明らかになった。

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© 2014 社団法人 環境科学会
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