環境科学会誌
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2014年シンポジウム
科学と社会の共創に向けたステークホルダー分析の可能性と課題
-福井県小浜市における地下水資源の利活用をめぐる潜在的論点の抽出からの示唆-
馬場 健司松浦 正浩谷口 真人
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2015 年 28 巻 4 号 p. 304-315

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抄録

本研究では,主要水源として地下水に依存している福井県小浜市における持続可能な地下水の利活用について検討するため,ステークホルダー(SH)分析を用いて,地下水に対してどのような人々がどのような関心や期待,あるいは懸念を抱いているのかについて分析し,潜在的論点を抽出した。そしてその分析を通して,科学と社会の共創に向けたSH分析の可能性と課題について検討した。2013年5~8月に計38件(48名)へ実施した聴き取り調査により,各SHの利害関心を整理し,得られた主な結果は次のとおりである。第1に,地下水に係る前提知識や使用水量などの客観的な情報・知識について各SH間でギャップがある。これから小浜市によって実施される科学的調査による客観的情報が適切に共有されれば,このギャップを埋められる可能性が高まる。第2に,地区間の関心度や地下水に見出している価値に違いが見られるなど,SHの関心は非常に多様であり,画一的に取り扱うことのできない様々な事情が存在する。地下水管理の検討にはこれらに配慮した適切な課題設定が必要となる。第3に,行政とSHとの間や,SH間で連携が不足している状況がいくつか見受けられるため,良好な協働関係の構築により,地下水管理を可能とする体制を整備する必要がある。
以上の事例研究の結果を踏まえて,また2014年3月に成立した水循環基本法施行下における順応的ガバナンスを見据えて,SH分析がいかなる役割を果たし得るかについては,十分である面とそうではない面の両方がある。前者については,必ずしも十分に認識されていなかった課題を発見し,それらのフレーミングギャップを埋める必要性を指摘し得るものの,後者については,例えば資源間のトレードオフというフレーミングをいかにSHに与えるか,という点では必ずしも十分ではない。専門家が科学的エビデンスをもって警鐘を鳴らす(新しいフレーミングへの気づきを与える)ことがSH分析の過程で必要になる可能性がある。

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