熱帯林の農地への転用は,土壌有機物の減少を招き,土壌の質が劣化すると言われている。熱帯林の保全と食料生産の両立のためには,すでに農地となった土壌の劣化を防ぐ保全的な利用を改善する必要がある。農地土壌の保全管理として,耕起の抑制,有機物マルチ,輪作が有効であることが明らかにされつつある。そこで,インドネシア・スマトラ島南部のランプン州のサトウキビプランテーションにて土壌保全的な農地管理を導入し,収穫量を比較した。ここで導入した保全管理は,不耕起栽培とバガス・マルチの施用であり,それぞれの有無を組み合わせて4処理を比較した。実験開始5年目に比較したところ,処理間にサトウキビと砂糖の生産量は有意な違いは見られなかったが,砂糖の含有率は不耕起処理で有意に高かった。したがって,熱帯においても不耕起栽培とマルチの導入は,有効な保全管理の手法であることがわかった。