環境科学会誌
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環境情報開示と企業価値—CDPレポートによる評価—
杉野 誠 井上 雄介
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2017 年 30 巻 2 号 p. 150-160

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抄録

企業の社会的責任の高まりとともに,企業の環境情報開示が多く実施されている。環境情報開示には,法律で要求される場合と自主的に行われる場合とがある。実際に,開示された環境関連の情報をもとに企業の評価が行われ,その結果が公表されている。しかし,法的拘束力がある情報開示では,法律で求められる必要最低限の情報しか公表されない可能性がある。また,自主的な情報開示では,企業にとって良いものしか開示されない可能性がある。そのため,統一された項目で企業の評価が実施されなければ,開示内容に基づいた評価結果にバイアスが生まれる可能性がある。ただし,法的拘束力がある情報開示より,自主的な情報開示の方が多面的な情報が開示されるため重要である。企業が自主的な環境情報開示に取組む理由として,①環境意識が高い消費者の獲得(売上の増加),②資本コストの引き下げ,③労働者の獲得などが考えられる。環境情報開示は,これらのメリットがあると考えられるが,その反面,企業内部の情報収集,部署間の決済など費用を要する。加えて,第三者による評価が低い場合,逆効果が生じるリスクがある。本稿では,市場での評価が企業の自主的な環境情報開示を行う動機となっているのかを明らかにする。また開示された情報の第三者評価が市場によって評価されているかを明らかにする。具体的には,2010年から2013年の間のCDPレポートの公表と,CDP対象企業の株価との間に影響を関連があるかを検証する。分析の結果,情報開示を行った事実が市場に公表されても企業価値(株価)の大幅な上昇が認められなかった。

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