環境科学会誌
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2015年シンポジウム
災害に対する地域社会のレジリエンス性評価—質問紙調査データを用いた8地域の比較—
小杉 素子 馬場 健司田中 充
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2017 年 30 巻 3 号 p. 225-237

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抄録

本研究では,気候変動に関わる自然災害や社会環境の変化による被害に対する都市や地域のレジリエンスを計測する指標として,馬場・田中(2015)が提起する行政の取り組み,インフラ整備,市民の意識の3指標の一つである,市民指標を作成した。市民指標の構成要素として,居住する地域へのコミットメントと地域コミュニティの組織活動への参加,地域で想定される危機事象,地域社会と家庭における脆弱性,災害リスクの捉え方などをインターネット調査により測定した。災害として土砂災害・渇水・熱中症・寒波・地震と津波を取り上げ,過去数年において発生頻度が高い8地域(土砂災害:新潟県,鹿児島県,渇水:香川県,愛知県,熱中症:京都市,北九州市,寒波:札幌市,地震と津波:仙台市)を選び,それらの地域に居住する成人男女を調査対象とした。回答者は,自分の居住地域において発生頻度の高い災害に対して,他の災害よりも危機事象だという認識を強く持っていた。居住地域へのコミットメントや組織活動への参加は,新潟県や鹿児島県,香川県などの地方の対象地域で評価が高く,仙台市や札幌市では相対的に評価が低かった。認識される地域社会や家庭での脆弱性は札幌市や愛知県で評価が高く(脆弱性の数が少ない),鹿児島県や香川県で評価が低かった。災害に対する総合的な地域レジリエンスの市民指標として,地域におけるリスクの認知や予防に関する側面では札幌市と愛知県の評価が高く,危機時の共助や復旧復興に関わる側面では鹿児島県と香川県で評価が高いことが示された。

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© 2017 公益社団法人環境科学会
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