環境科学会誌
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一般論文
再生可能エネルギーによる地域社会の構造的再生の評価と関与—長野県飯田市と滋賀県湖南市の住民アンケートの分析—
白井 信雄
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2018 年 31 巻 1 号 p. 13-27

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抄録

本研究では,地域主導の再生可能エネルギー導入における国内屈指の先進地域である長野県飯田市と滋賀県湖南市の住民アンケート調査により,再生可能エネルギーによる地域社会の社会経済システムの変革を図る構造的再生への期待と実態の評価,及び再生可能エネルギーへの関与の実態と今後の意向を明らかにした。この結果,次のことが明らかになった。

(1)両市の住民ともに,再生可能エネルギーによる地域社会の構造的再生への期待が全国平均と比較して高い。実態評価では,関係者の参加が増えているという評価は比較的高いものの,それ以外の側面での評価は高くない。(2)両市の住民は再生可能エネルギーなどに係る必要性支持度が高い。しかし,自らの行動意図は高くなく,必要性支持度と行動意図の乖離がある。また,住宅用太陽光発電や省エネルギー住宅の導入は活発であるが,市民出資や再生可能エネルギーの電力購入,また行政計画や市民活動への参加については,実施度及び実施意向ともに高くない。

以上のように,両市ともに,地域主導で再生可能エネルギーへの取り組みを実施してきた先進地であることは間違いがないものの,さらに住民の巻き込みを進めていくべき余地がある。地域行政の今後の施策課題として,①市民共同発電への地域住民の出資,②住民向けの地域で発電された再生可能エネルギーの電気を供給する新電力会社の充実,③再生可能エネルギーによる地域社会の構造的再生における目標や関与について住民主導で検討する機会の創出などがあげられる。こうした施策課題は,他地域にとっても参考になる。

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