本研究では,滋賀県高島市朽木地域に伝承されてきた地域資源である発酵食品の「へしこ」を題材としたワークショップ(WS)を実施,話し合われた内容や話題の流れを可視化し把握することで,地域資源であるへしこが持つ食料と技術,コミュニケーションツールとしての価値が現在,地域住民にどのように捉えられているか把握するとともに,WSの効果を考察することを目的とした。
その結果,伝統的な食材としてだけではなく災害時の保存食という新たな価値が見いだされていることや,社会状況の変化に伴い技術が工夫され変化してきたこと,朽木地域全体を意識した議論のきっかけとなり得ることを明らかにすることができた。また,WSによって参加者間のつながりが拡大するとともに,地域資源であるへしことその活用法を認識した上で多様な人が集まる場の重要性に関する気づきや,参加者の仕事や取り組んでいる,あるいは今後取り組みたい活動へ発言内容の広がりや意識の具体化が見られたことから,本研究で実施したWSは地域資源の活用や継承などのまちづくり活動を進めていくための第一段階として効果的であったと考えられた。