環境科学会誌
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一般論文
ライフスタイル標準語彙の構築とその評価 —持続可能なライフスタイルデザインにおける発想支援を目指して—
岸上 祐子 古川 柳蔵溝口 理一郎
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2019 年 32 巻 1 号 p. 11-25

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抄録

持続可能で心豊かなライフスタイルを実現するためには,心豊かなライフスタイルから発想した,全体最適なサービスあるいは技術,社会システムが有効である。筆者らはオントロジー工学に基づき,心豊かなライフスタイルを行為分解木で表現し,その構造を説明する概念の抽出を行ってきた。こうして抽出した概念を一貫性のある共通語彙を用いて記述することによって,そこに含有される知識は再利用することができる。そこで,行為分解木によって得た概念を整理し,ライフスタイルにおける標準語彙(LS標準語彙)を検討した。

ソフトOntoGearSIRを用いて構築した行為分解木40本から一般的に使われている語彙(表層語彙)2,395語彙を抽出し,それぞれの語彙についてLS標準語彙化の検討を行った。検証の過程を経て最終的には218語彙のLS標準語彙を採用した。

得られたLS標準語彙を,表層語彙のカバー率と本研究の目的である新たなライフスタイルのデザインに資するかという2点で検証を行った。LS標準語彙の構築に使用しなかった行為分解木に使われている表層語彙142語彙のカバー率をみると96.9%であった。また,任意の行為分解木の表層語彙をLS標準語彙に置き換え,同じとみなされるゴールを達成する方式を他の行為分解木にある方式から集約し交換することで,新たなライフスタイルがデザインされた。このことは,LS標準語彙によって方式を集約することは新たなライフスタイルをデザインし,多数の心の豊かさに結び付く技術シーズやサービスの抽出や,新たな社会システムなどの発想に資する可能性を示唆している。

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