環境科学会誌
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特集論文
環境科学分野における情報通信技術の利活用の可能性
山本 佳世子
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2019 年 32 巻 2 号 p. 26-35

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抄録

近年のわが国では,多様な情報通信技術が次々に開発され,私たちの日常生活での利活用が急速に進んでいる。また多様な学問分野でも,情報通信技術の積極的な利活用が進むとともに,情報分野とその他の分野の複合領域,融合領域における研究,異分野との共同研究も新たに誕生し,各学問分野の領域を超えた取り組みが進みつつある。本論文は以上の社会的・学術的背景を踏まえ,環境科学分野において様々な情報通信技術がどのように利活用される可能性があるのか,情報通信技術の利活用によって環境科学分野がどのように進展する可能性があるのかについて論じることを目的とした。なお本論文では広義の「環境」を対象として,環境保全と防災の双方を1つの研究体系に位置付けて捉えた。

本論文では,まず第5期科学技術基本計画(2016年閣議決定)における最も重要な概念の「超スマート社会」について紹介し,この基盤となる高度情報ネットワーク化社会について示すとともに,超スマート社会の情報通信技術としてのソーシャルメディアGISの役割について述べた。これらに基づいて,環境防災研究における情報通信技術を利活用した研究事例として,地震災害の防災・減災対策を想定し,災害情報システムとしてのソーシャルメディアGISの開発と社会実装化の研究成果について紹介した。さらに環境科学分野における情報通信技術の利活用の可能性と限界について,他の学問分野の例を引用しつつ述べた。

最後には,情報通信技術を用いた本論文の筆者の研究について概要を簡潔に紹介した。そして本論文のまとめとして,(1)これまでに開発したシステムを環境科学分野にも適用し,社会実装化を目指すこと,(2)情報工学の多様な情報通信技術を環境科学に導入することにより,新しい研究の展開を目指し,環境科学分野の進展に貢献することの2点を今後の研究課題として示した。今後研究構想として,筆者らが開発した災害情報システムの住民参加型の環境活動や学校の環境教育における応用などを提案した。

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