2019 年 32 巻 4 号 p. 125-140
偏西風帯で東シナ海・日本海側高山・離島は中国大陸方面からの大気汚染物質長距離輸送の影響最前線で,利尻や隠岐の国設酸性雨測定所では25年間調査のNO3−やH+沈着量が経年増加,nss-SO42−沈着量は近年横ばいの傾向であった。全国環境研協議会2015年度観測値のSO42−・nss-SO42−・NO3−・NH4+・H+沈着量では,福井から鰺ヶ沢の日本海側9地点で南から北へ,福岡から宇土の北九州東シナ海側6地点では北から南へ,減少傾向であった。1994~2003年度の日本海側離島の対馬はSO42−やNO3−沈着量が経年増加,他島は横ばい傾向で,東シナ海側離島では奄美を除いて増加傾向であった。屋久島放射状渓流での18年間年4回の定期水質調査のNO3−-N濃度とNO3− +NH4+沈着量は経年増加が見られた。対馬・隠岐・能登半島・佐渡ではNO3−+NH4+沈着量と渓流のNO3−-N濃度には相関が見られ,渓流水質濃度は西から東方向に低下傾向を示した。対馬・福江島・天草下島・屋久島の渓流では北から南方向にNO3−-N濃度が低下し,海塩影響の大きい島ではSO42−濃度が高かった。鳥海山・月山・朝日岳・飯豊山・妙高山の放射状渓流のNO3−-N濃度は高緯度ほど低下した。
能登半島・両白山地から伊吹山地や御嶽山の南北方向脊梁山地の東西両側渓流では,西側のSO42−・NO3−濃度が高かった。日本海側から東の内陸部へ標高が高くなる太平山・森吉山・秋田駒ヶ岳の放射状渓流では,NO3−-N濃度が西から東に低くなった。東シナ海側で東西方向の福江島・天草下島から多良岳・九重山・両子山の放射状渓流のNO3−-N濃度は,西から東へ低くなった。偏西風帯下の日本海側で東西方向に並ぶ離島では経度とともにNO3−沈着量や渓流のNO3−-N濃度が低くなり,東シナ海側離島のそれらは緯度の低下に伴う減少傾向となり,西方の中国大陸に近いほど影響が大きいことが推測された。