環境科学会誌
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一般論文
入間川へ流入する有機汚濁物質と浄水処理後の残留状況のノンターゲットスクリーニング分析
石井 淑大栗栖 太畠山 準春日 郁朗古米 弘明
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2020 年 33 巻 5 号 p. 79-89

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抄録

重要な水道原水である河川水中には,多種多様な溶存有機物(Dissolved Organic Matter; DOM)が存在しており,それらが浄水処理や水道水質に影響を及ぼすことが懸念されている。本研究では埼玉県内を流れる入間川と,その中流部にて取水する鍵山浄水場を対象として,下水処理水などに由来する有機汚濁物質の河川流下過程における動態と,それらの浄水処理工程における消長を,Orbitrap型質量分析計を用いたノンターゲットスクリーニング分析によって化合物レベルで追跡した。河川の流下に伴い,質量分析により検出されるDOMコンポーネント数が増加していくことが確認され,浄化槽排水や生活雑排水の流入,事業所からの排水,ノンポイント汚染などの影響であると推測された。さらに,下水処理水の流入が河川水中のDOM組成に大きな影響を与えることが示された。処理水放流地点の下流で取水する鍵山浄水場において,原水中のDOMコンポーネントは浄水処理により2回の採水の平均で38%が除去されていた。浄水処理後にも残存しているDOMのうち,分子式と構造が推定されたものには,洗剤成分の分解物と考えられる化合物が含まれていた。また,浄水処理により生成されたコンポーネントも検出されており,これらの一部は塩素原子や臭素原子を含み,既知の消毒副生成物とは異なる分子式を持つものであった。より高度な水道水質管理に向け,河川水中に存在する微量有機汚濁物質の網羅的な監視手法を確立していくための手法として,ノンターゲットスクリーニング分析が有用である可能性が示された。

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