環境科学会誌
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2021年シンポジウム
脱炭素社会の実現に向けたモデル研究の状況と展望—アジア太平洋統合評価モデルAIMを通じた考察—
増井 利彦 高橋 潔
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2023 年 36 巻 2 号 p. 83-93

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抄録

2015年に採択されたパリ協定のもと,産業革命前からの世界平均気温を1.5°Cに抑える「1.5°C目標」の実現に向けて,国際社会や多くの国は排出削減目標や取り組みを公表している。そうした背景にあって理論的な支えとなっているのがモデルによる定量的な分析である。気候変動問題は世界全体,100年以上という超長期に及ぶとともに,様々な学問分野に関わる巨大な問題であり,その理解や対策の提示は容易ではない。こうした状況で,政策決定者をはじめとするステークホルダーと様々な学問分野の間に立ち,政策的な要望を受けて科学的な知見を提供するインターフェースとしての枠組みが統合評価であり,モデルというツールを用いて統合評価を定量化するツールが統合評価モデルである。本稿では,統合評価モデルが気候変動問題にどのように関わり,どのような研究成果を政策決定者等のステークホルダーに提供してきたかを,国立環境研究所を中心に開発してきたAIM(アジア太平洋統合評価モデル)を例に,世界規模の視点,国の視点でそれぞれ説明するとともに,今後の研究展望について説明を行う。

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