環境科学会誌
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一般論文
水道水中農薬のGC/MSスクリーニング分析データベースの構築と定性・定量精度の検証
木下 輝昭小田 智子栗田 翔山崎 貴子猪又 明子佐久井 徳広野原 健太中村 李土屋 裕子小林 憲弘
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2024 年 37 巻 2 号 p. 53-63

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抄録

ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)による水道水中農薬168種のスクリーニング分析データベースをアジレント・テクノロジー社製の装置で作成し,標準液および河川水試料を用いて定性・定量精度の検証を行った。データベース作成から約1カ月後に再度,各農薬0.05 mg/Lの標準液をデータベース作成時と同一条件でスクリーニング分析を行ったところ,データベースに登録した168農薬のうち162農薬を検出できた。検出できなかった6農薬は定量下限が0.05~0.1 mg/Lの範囲にあったが,水道水中の農薬検査で要求される定量下限は十分に満たした。一方,誤同定に注意を要する農薬も幾つか存在することが明らかになった。実試料へのスクリーニング分析の適用時には,これらの農薬の定性には特に注意する必要がある。多摩川中流域5地点の河川水にスクリーニング分析を適用した結果,異なる検査員が実施した通常分析と検出農薬は全て一致した。また,スクリーニング分析による定量値は通常分析の0.63~0.98倍の範囲にあり,河川水試料から検出された農薬については,スクリーニング分析法の定量誤差は通常分析と比べて1/2~2倍以内に収まることが示された。スクリーニング分析法は標準品を用いずにデータベースに登録した農薬を迅速・簡便に,なおかつ通常分析と比べて一定の誤差範囲内の定量精度で分析可能であることから,水道水中農薬の検査においてスクリーニング分析法の有用性は高いと考えられる。

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