環境科学会誌
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一般論文
フレーミング調整に着目したサステナビリティ人材育成—音声映像メディアを活用した「厄介な問題」を題材として—
紀平 真理子 丸山 康司
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2024 年 37 巻 6 号 p. 190-199

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抄録

社会,経済,環境に関して予測不可能で,さらに急速に変化する不定性の高い時代には,事実と価値判断の交錯や,問題設定の単純化や二項対立化によりフレーミングの共有すら困難な状態にある。そのため,ステレオタイプにとらわれず,ステークホルダー間の異なるフレーミングを把握,調整し,具体的な解決策を探る人材が重要である。しかし,このようなサステナビリティ人材のための環境教育についてはさらなる実践と議論が必要である。こうした背景を踏まえて本稿では,浜名湖のアサリ減少という「厄介な問題」を題材に,視覚的問題評価法(VPA)という音声映像メディア教材を制作し,それを用いて大学生を対象にワークショップを実施した。その結果,問題設定やフレーミングの過程で,抽象度,着目するステークホルダー,自然物や人工物のアクター化が,複雑な問題の単純化を回避し,フレーミングを調整するための要件として明らかになった。今後,この方法論を環境教育の手法として応用し,環境問題の解決に寄与するサステナビリティ人材の育成に貢献できる可能性を示した。

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