抄録
河川水中の二酸化炭素濃度(pCO2 )の測定結果を報告した。pCO2 は昼間低濃度,夜間高濃度になる日変化を示した。pCO2 の日較差は500から1200ppmの範囲で変化した。水中生物(植物,動物,微生物)の呼吸量が昼夜であまり変らず,また,炭酸物質の移流の影響が無視できるとすると,pCO2 の大きな日変化は次の3つの要因に帰すことができる:二酸化炭素の大気一河川水間の交換,水温変化,水中植物の光合成活動。各項の大きさを推定すると,二酸化炭素の大気一河川水間の交換と水温変化による影響は,pCO2 の日変化に対して30~60ppm程度の寄与であり,実際のpCO2 の日較差の値に比較して小さいことがわかった。間接的な証拠ではあるが,溶存した二酸化炭素(CO2 )と酸素(0,)の関係から,水中植物の光合成活動がpCO2 の日変化の大きさを決めている最も重要な要因であると結論できた。また,pCO2 は夏季に高濃度(約1000ppm),冬季に低濃度(約350ppm)になる季節変化を示した。このpCO2 の季節的なレベルは,水温が変化することによる溶解度の相違を反映している。