抄録
北海道産オオワシ(Haliaeetus pelagicus),オジロワシ(H. albicilla)および岩手県産イヌワシ(Aquila chrysaetos)の肝臓,腎臓および筋肉中微量元素18種を測定した。その結果,V,Ag,CsおよびRbなどの濃度は,他の鳥類と比較して高い値が認められた。しかし,肝臓中のHgおよびCd濃度は相対的に低値を示した。Pb中毒の症状がみられた個体および筋胃内に鉛弾の痕跡が認められた個体は,高いPb濃度を示した。また,銃弾の主成分であるPbと共存含有成分Sbの肝臓中濃度には,正の相関関係が見られ,猛禽類の高濃度Pb蓄積は,主として銃弾由来であることが示唆された。肝臓中のSb濃度の測定は,銃弾由来のPb汚染を判定する手がかりとして活用できよう。