環境科学会誌
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戦後日本の食生活変化とエネルギー消費に関する研究
松本 亨井村 秀文
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2000 年 13 巻 4 号 p. 455-468

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抄録

 戦後日本の急速な経済発展は,日本人の食生活を大きく変化させた。消費の面では,摂取カロリーと肉食の増加,主食の変化,食の外部化・簡素化,嗜好の高級化・多様化等である。これらの変化は,食料の生産段階,流通段階に対しても大きな影響を及ぼした。例えば,食料・飼料輸入の増加であり,また,輸送の長距離化・高度化・多頻度化,小売形態の大規模化・長時間化,外食産業やテイクアウト商品の拡大とそれによる食品ロス(残飯)の増加等である。本研究では,これらの変化が環境に与える影響としてエネルギー消費を指標に定量化することを目的とする。 まず,生産から流通,消費までを包括的に分析した。その結果によれば,1人あたり食料供給を賄うために4,320×103kcal/人/年のエネルギーを消費していることがわかった(1994年)。これは,供給カロリー(2,634kcal/日)の約4.5倍,摂取カロリー(2,023kcal/日)の約5.9倍である。その内訳は,生産過程で33%,家庭での消費過程で29%である。全国では5.4×1014kcalのエネルギー消費となり,我が国の年間エネルギー消費量の15 .5%に相当する。次に,エネルギー消費変化の要因分析を行った。その結果,食料の自動車輸送については,平均輸送距離の長距離化の要因が最も大きく,都市化や食料の産地直送などの影響があると考えられる。外食については,外食率は一貫してのびているものの,1975-85年の間は床面積あたりエネルギー消費原単位の改善効果が大きいことがわかった。また,米輸送に関しては最適輸送型問題の手法により,現在の都道府県別需給構造からエネルギー最小となる輸送パターンを算出した。その結果は,実績値が最適解よりエネルギー消費量で14%大きい結果となったが,これは消費者の嗜好によるエネルギー消費分といえよう。

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