環境科学会誌
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13 巻, 4 号
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  • 山本 佳世子
    2000 年 13 巻 4 号 p. 439-454
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     わが国の都市地域は,諸外国と比べて緑地不足が著しい。緑地は環境保全機能やレクリェーション機能に加え,災害時には避難場所や延焼防止等の防災機能も果たすため,緑地不足は都市の防災性にも関連する重要な問題であるといえる。また公園・緑地は,常時自由に立ち入ることの可能な非建蔽地であり,植栽も備えていることから,火災の延焼や建物倒壊の危険性が高い震災直後段階の避難場所としての有効性が著しく高い。 そこで本研究では,特に緊急避難場所としての役割に着目し,空間分析ツールとして有効な地理情報システム(GIS)を利用した一連の公共的緑地の充足度評価方法の提示を行うことを目的とする。さらに緑地不足が著しい東京都を研究対象とし,評価を行ったうえで整備必要量設定のための情報提供を行う。 まず第2章では,都市防災計画における緑地整備の問題点を整理したうえで,避難場所としての公共的緑地の整備方針を示す。そしてこれをもとに,避難場所どしての公共的緑地を地区レベルと広域レベルの2つの空間スケールから捉えた充足度評価方法の考え方を提案する。 次にこの評価方法の考え方に従い,第3章では,地区レベルの主に小規模な公共的緑地の充足度評価方法を提示し,評価を行う。第4章では,広域レベルの主に大規模な公共的緑地へのアクセシビリティ評価をもとにした充足度評価方法を提示し,評価を行う。 さらに第5章では,第3章と第4章の評価結果をもとに地域の最大人口に対応した緑地整備が必要であることを示したうえで評価方法を提示し,評価を行う。また第6章では,公共的緑地の充足度評価方法を応用し,整備必要地区における不足量の推計方法を提示して不足量の推計を行う。 最後に第7章では,以上の各章で得られた研究結果をまとめる。そして本研究で提示した充足度評価方法により,これまで課題として挙げられていた小規模緑地や地域の人口への対応を考慮した評価を総合的に行うことと,充足度評価方法を応用することにより整備必要地区における不足量の推計を行うことが可能になったことなどを示した。
  • 松本 亨, 井村 秀文
    2000 年 13 巻 4 号 p. 455-468
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     戦後日本の急速な経済発展は,日本人の食生活を大きく変化させた。消費の面では,摂取カロリーと肉食の増加,主食の変化,食の外部化・簡素化,嗜好の高級化・多様化等である。これらの変化は,食料の生産段階,流通段階に対しても大きな影響を及ぼした。例えば,食料・飼料輸入の増加であり,また,輸送の長距離化・高度化・多頻度化,小売形態の大規模化・長時間化,外食産業やテイクアウト商品の拡大とそれによる食品ロス(残飯)の増加等である。本研究では,これらの変化が環境に与える影響としてエネルギー消費を指標に定量化することを目的とする。 まず,生産から流通,消費までを包括的に分析した。その結果によれば,1人あたり食料供給を賄うために4,320×103kcal/人/年のエネルギーを消費していることがわかった(1994年)。これは,供給カロリー(2,634kcal/日)の約4.5倍,摂取カロリー(2,023kcal/日)の約5.9倍である。その内訳は,生産過程で33%,家庭での消費過程で29%である。全国では5.4×1014kcalのエネルギー消費となり,我が国の年間エネルギー消費量の15 .5%に相当する。次に,エネルギー消費変化の要因分析を行った。その結果,食料の自動車輸送については,平均輸送距離の長距離化の要因が最も大きく,都市化や食料の産地直送などの影響があると考えられる。外食については,外食率は一貫してのびているものの,1975-85年の間は床面積あたりエネルギー消費原単位の改善効果が大きいことがわかった。また,米輸送に関しては最適輸送型問題の手法により,現在の都道府県別需給構造からエネルギー最小となる輸送パターンを算出した。その結果は,実績値が最適解よりエネルギー消費量で14%大きい結果となったが,これは消費者の嗜好によるエネルギー消費分といえよう。
  • 坂村 博康, 森下 研, 田中 浩二, 安井 至
    2000 年 13 巻 4 号 p. 469-482
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     日本における飲料用アルミ缶のライフサイクルにわたるマテリアルフローを調査し,それをもとにしてアルミ缶のLCI(ライフサイクルインベントリー)ソフトウェアを作成した。このソフトウェアには可変のパラメーターが導入されており,そのうちの回収率とCan to Can率を用いて仮想状況におけるアルミ缶リサイクル処理による環境負荷変化を調べた。1缶(350ml,16.2g)当たりのライフサイクル消費エネルギーを推算した結果,1997年度現在で555.8kcal,2002年度予測(回収率80%,Can to Can率80%)で503 .7kca1の値が得られた。また現在のシステムが変わらないという条件のもとで,アルミ缶のライフサイクル消費エネルギーは330kca1よりは小さくならないことも推算された。回収率とCan to Can率の向上は環境負荷の低減につながることを示した。
  • 岩崎 一弘, 矢木 修身, 石橋 良信, 瀬戸 裕之
    2000 年 13 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     近年,バイオテクノロジーの発展に伴い有害物質分解微生物等の有用微生物を野外で利用する試みがなされてきている。我々は,有用微生物の環境中での挙動を追跡するための水銀耐性マーカ遺伝子を組み込んだプラスミドpSR134を作成した。本プラスミドを土壌中に広く生息している各種のシュードモナス属細菌に導入し,マーカー付き組換え微生物を作成した。これらの組換え微生物の環境試料からの検出・定量法として,少量の塩化第二水銀で多量の試料の処理が可能な軟寒天重層法を開発し,この手法を用いて土壌マイクロコズム中での各種組換え微生物の生残性を調べた。本マーカーは環境中の各種組換え微生物のモニタリングに有効であった。また,組換え微生物を野外利用する場合の安全性評価の一つの指標として,微生物生態系におよぼす影響を検討した。その結果,土壌中の土着微生物数に対する組換え微生物接種の影響は認められなかった。
  • 藤田 慎一, 高橋 章, 速水 洋, 櫻井 達也
    2000 年 13 巻 4 号 p. 491-501
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     全国規模で3年間にわたって実施した広域観測のデータをもとに,1980年代後半の日本列島を対象に,降水中の硝酸イオンとアンモニウムイオンの平均濃度と平均降水量をもとめ,これをもとに湿性沈着量を推計した。 沿岸海域を含む日本全域への全湿性沈着量は,窒素換算で年間約547GgN/yと見積もられる。その内訳を形態別にみると,硝酸態窒素が約211GgN/y,アンモニア態窒素が約336GgN/yであり,季節別にみると寒候期が約239GgN/y,暖候期が約308GgN/yである。硝酸態窒素の湿性沈着量は,寒候期の日本海側と暖候期の関東の気候区で多く,アンモニア態窒素の湿性沈着量は,寒候期の日本海側と暖候期の九州・中国・関東の気候区で多い。過去10年間,寒候期の日本海側を中心にみられる降水中の硝酸イオンとアンモニウムイオンの濃度の漸増は,国内の発生源で説明することが難しく,硫黄化合物と同様に圏外からの窒素化合物の輸送が顕在化していることが示唆される。
  • 四蔵 茂雄, 原田 秀樹
    2000 年 13 巻 4 号 p. 503-511
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     2020年までのネパールのエネルギー需給予測を行った。またエネルギー需要の伸びと森林減少・森林劣化について検討し,必要な対策について考察を加えた。その結果(1)2020年のエネルギー需要は現在の約2倍となること,(2)将来的にも薪材が同国のエネルギーミックスの中心を成すことを明らかにした。また(3)森林減少と森林劣化は避けられず,天然林の割合は2020年には森林面積の12%程度にまで減少すること,さらに(4)天然林の減少は積極的な植林の実施によっても回避できないことを示した。 また同国の森林の重要性を考えると,本研究で提示したシナリオはなんとしても回避しなければならないため,薪材への依存を低減させる具体的かつ積極的な取り組みが,早急に必要であることを指摘した。
  • 宮原 敏郎, 清水 信彦, 赤木 靖春
    2000 年 13 巻 4 号 p. 513-518
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     細胞状泡沫層中に形成される界面活性剤水溶液の気泡間液膜の崩壊時間を単一気泡を発生させることにより求めた。崩壊時間は二つに区分される。すなわち排水時間と破壊時間である。排水時間は粘度,表面張力および表面粘度で相関される。一方破壊時間は表面粘度のみの関数となる。これらの知見から消泡は高温で有効であることが見いだされている。
  • 土坂 享成, 木村 哲哉, 今井 邦雄, 妹尾 啓史, 田中 晶善, 小畑 仁
    2000 年 13 巻 4 号 p. 519-528
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     植物と幾つかの菌類は,重金属が体内に侵入すると(y-Glutamyl-cysteinyl)n-Glycine,(y-EC)nG(n=2-11)の一般構造式を有する金属結合ペプチドを生成する。(γ-EC)nGは,細胞内に侵入したカドミウム(Cd)等の重金属をキレート化することにより解毒していると考えられており,植物の重金属耐性に重要な役割を果たしている。本研究は,重金属耐性・集積性植物の作出をめざして,(γ-EC)nG合成活性を有するカルボキシペプチダーゼ(CPase)のタバコ培養細胞への導入を試みたものである。 イネ由来のCPase遺伝子を35Sプロモーターの下流域に接続し,それをNicotiana tabacum L.cv. Bright Yellow2 (BY-2)に導入した。その結果,CPase遺伝子を導入した培養細胞の(γ-EC)nG合成活性の増加が認められ,更にその培養細胞のCd耐性の増加も認められた。また,CPase遺伝子導入細胞をCdに曝露した結果,細胞内の(γ-EC)2G量が多い程,Cd量も多いことが認められた。このことから,CPaseが植物体内で(γ-EC)nGを合成することが可能であること,そしてそれによりCd耐性を付与させることが可能であることが示された。また,(γ-EC),G合成能を有する酵素の遺伝子を植物に導入することにより,重金属耐性植物を作出できる可能性も示された。
  • 大谷 洋, 高橋 潔
    2000 年 13 巻 4 号 p. 529-538
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     既存の農業における温暖化影響の研究では,社会の基本的構造が将来においても変わらないという前提でその影響を推定してきた。本研究では,将来の経済成長・農業技術進歩・食料選好の変化等に伴う社会の基本構造の変化を前提として温暖化が食料供給に与える影響の大きさを推計した。分析の結果,将来は豊かで高い農業技術力を有している社会になっており,温暖化により食料飢餓といった深刻な事態はおこらないと予測された。温暖化による食料価格に与える影響を求め,家計に与える影響を見てみると,既存の研究の手法では特に発展途上国において家計を圧迫するという結果が出るが,将来の発展した社会を想定した場合はインドを除けば温暖化による影響は小さいということが予測された。
  • 川島 美香, 武田 幸作, 近藤 矩朗
    2000 年 13 巻 4 号 p. 539-548
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     人工気象室内においてキュウリ芽生えに数日間UV-B照射を与える実験を行った。その結果,UV-B照射を行ったキュウリは,照射を行わなかったキュウリと比べてその第一葉中に非常に高い活性酸素耐性を獲得していることが,パラコートを用いた耐性実験により明らかとなった。この耐性の増大はUV-B処理開始後1日目から観察され,12日間のUV-B処理期間中維持された。活性酸素解毒酵素へのUV-B照射の影響を調べたところ,スーパーオキシドジスムターゼ,アスコルビン酸ペルオキシダーゼ,グアヤコールペルオキシダーゼの活1生が増大することが示された。しかしそれらの活1生上昇は,照射開始6日目という比較的遅い時期からしか起こらないことも明らかとなった。一方,フェノール性化合物の蓄積はUV-B照射開始1日目から観察された。更に,フェノール性化合物のHPLC分析の結果,UV-B照射による種々の物質の増加が認められたが,特に,抗酸化活性を持つと思われる物質(クロロゲン酸様物質)の特異的な増加が示された。よって,活性酸素解毒酵素だけでなく,フェノール性化合物の蓄積などの他の要素も,キュウリ芽生えの活性酸素耐性の増大に関与している可能性が考えられた。
  • 2000 年 13 巻 4 号 p. e1-e2
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
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