環境科学会誌
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ダイオキシン類の大気環境濃度に関する一考察
水野 建樹東野 晴行
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2001 年 14 巻 3 号 p. 269-277

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抄録
 関東地域にある市街地で行われた一般環境大気中でのダイオキシン類(ここではPCDD,PCDFをいい,PCDD/Fsとも書く)濃度測定結果を用いて動態の解析を行った。市内30地点,2km程度のメッシュで冬季・夏季でそれぞれ2日間の測定結果では,いずれの日も地点による系統的な濃度変化はなく,全体的な濃度レベルは測定日によって大きくばらついた。高濃度出現時の気象やSPM濃度との関係から考えると,当該地域のダイオキシン類発生源は地表付近に広く分布していると推定された。また,大気中のダイオキシン類濃度日平均値がSPM濃度日平均値と高い正の相関が得られた。なお,コプラナPCB(Co-PCB)については大気中におけるPCDD/FS濃度との関係として,TEQ換算で約6%となる結果が得られた。 大気中の推定年平均濃度から求めた土壌への沈着量と,実際に測定された土壌中の濃度との比較から,地表付近の土壌中ダイオキシン類の寿命は7~10年と見積もられた。また,ダイオキシン類の発生源が地上付近にあり,水平方向一様,発生量と鉛直上方へのフラックスがつり合うという簡単な拡散モデルにより市内ダイオキシン類発生量を求め,さらに人口比で全国規模に当てはめたところ,国内全排出量はkg-TEQ/年のオーダーとなり,既に調査され把握されている発生量と同程度となった。このことは,未把握の小発生源が広く分布していることを示唆している。 最後に,一般に小規模の地上発生源強度を実測で把握するのは極めて困難であるため,詳細な気象・濃度の鉛直分布データを収集し,ここで用いた方法を発展させれば小規模施設からの発生に対して地域全体としての発生源強度推定に役立つと考えられる。
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