環境科学会誌
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都市域における水辺の環境評価
萩原 清子萩原 良巳清水 丞
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2001 年 14 巻 6 号 p. 555-566

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抄録

近年,都市住民の身近な自然環境への関心の高まりから都市域の水辺環境の整備が望まれるようになってきた。本稿は,都市域の水辺の望ましい姿を描く過程の一段階として,都市住民はどのような水辺を望んでいるのかということを水辺環境への評価を通して把握しようとするものである。環境評価の対象とする環境の価値としては利用価値と非利用価値が挙げられている。しかし,本稿では周辺に多くの人が居住している都市域の水辺の環境評価を行うことを目的としており,人々が利用することにより水辺の評価が高まるとの考えから水辺の利用価値を求めることとした。そのため水辺の環境価値を求める手法として本稿では離散的選択モデルを採用した。離散的選択モデルの水辺環境評価への適用に際しては,選択肢の構造が複雑であること,特性変数が人々の主観的認識に基づくものであることなどを考慮に入れてモデルを構築した。このモデルを実際の都市域の河川に適:用するため周辺住民にアンケート調査を行った。モデル推定に際しては,水辺環境整備のための多くの情報を得るため3つの方法を試みた。まず,得られたデータ(顕示選好データ,Revealed Preference data:RP)をそのまま用い,サンプルを類型化することで良い結果を得ることができた。つづいて,潜在変数を導入することで人々の漠然とした印象で水辺利用の意思決定を行うことを表すモデルの推定を行うことができた。さらに,今後の水辺環境整備へのより多くの情報を得るため表明選好データ(Stated Preference data:SP)を利用した推定も行った。最後に,これらのモデルに基づいて経済的評価額を求めた。しかし,この評価額に関しては,時間価値問題が未だ解決されてない現状では代替案の比較の際のみに使用されるのが望ましく,評価額の絶対値を用いることには注意が必要であることを指摘した。

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