抄録
中国における土壌汚染および土壌保全法整備の現状を分析した。その結果,先進諸国に見られる土壌浄化責任などが明示された,包括的な土壌法制度は整備されていないことがわかった。土壌浄化対策が遅れた理由について,土地の管理責任の曖昧性,また,地方政府と郷鎮企業の依存関係を伴う,強固な地方保護主義の存在などが考えられた。さらには,土壌情報の不足も大きな原因であり,それによる土壌汚染リスクへの認識の低さが土壌保全法整備の遅れをもたらした。この解決策として,土壌情報開示にもとづく管理対策が必要となる。そのためには,中央政府と地方政府が密接に連携した,あらたな土壌管理システムの構築がのぞまれる。