環境科学会誌
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森林土壌における硫黄化合物の蓄積実態
谷川 東子高橋 正通今矢 明宏
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2004 年 17 巻 3 号 p. 211-215

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抄録

 森林土壌における硫黄の蓄積実態は,生態系における硫黄動態を解明する上で不可欠な情報であるが,我が国にはほとんどない。そこで我が国に広く分布するAndisolsとInceptisolsについて,硫黄現存量を形態別に明らかにした。その結果,以下の3点が明らかになった:(i)土壌表層(A層)では有機態硫黄の割合が高いものの,下層(B層)では無機態硫黄の存在割合が増加した。(ii)主要な硫黄蓄積形態はヨウ化水素酸還元態硫黄化合物(HI-reducible S)であった。(iii)表層からlm深までの硫黄現存量における形態別硫黄存在比(HI-reducible S:C-bonded S:PO4 可溶性S)は土壌によって若干異なり,Andisolsでは53:18:29,Inceptisolsでは40:30:30であった。従来からHI-reducible Sは不安定な有機態硫黄であると考えられているので,この形態の硫黄が安定して存在しているのか否かという点を明らかにすることが環境変動に対する日本の森林土壌の反応を予測する上で重要であると考えられる。

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