環境科学会誌
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新しい化学物質管理手法のあり方とリスクコミュニケーション:米国TRI(Toxic Release lnventory)施策の経験から
織 朱實
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2004 年 17 巻 4 号 p. 313-321

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抄録

 多種多様な化学物質によるリスクに対応するためには,従来の規制的手法だけでなく,自主的手法や経済的手法を組み合わせるポリシーミックス的視点が必要になる。また,様々な手法の組み合わせを検討する際には,個別のリスクの特性を考慮するとともに,手法適用のクライテリアを検討し,さらに関係者間のリスクコミュニケーションの促進等に配慮する必要がある。我が国の新しい化学物質管理手法検討を行う前提として,実際に様々な手法を活用している米国の化学物質管理施策の変遷,特にTRI(Toxic Release Inventory)施策の展開を検討することが有益でる。米国においても,化学物質管理施策は規制的手法が中心であったが,TRI等による化学物質情報公開をベースとした自主的取組促進へと変化するに伴い,市民参加やNGOとの協働のあり方も変化してきた。米国において新しい手法をより効果あらしめる,環境行政における市民参加制度の充実,リスクコミュニケーションを促進させる機能を担うNGOが存在している点が,特に興味深い。

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