抄録
我が国の一般廃棄物は安定化および減量化を目的として焼却処分を中心とした中間処理が行われており,2000年度においては,一般廃棄物のうち77.4%が焼却処分されている。焼却飛灰の溶出毒性評価は化学分析により行われているが,この方法では分析対象としている化学物質がどの程度溶出しているかを評価しているにすぎず,複数の化学物質が共存している状態の相互作用による毒性影響評価および生体へのリスク評価は全く考慮されていない。そこで,本研究では焼却飛灰溶出液のヒメダカを用いた1)成魚に対する急性致死毒性試験,2)CYP1A誘導試験,3)雄メダカ成魚に対するビテロジェニン(Vitellogenin; Vtg)誘導試験を行った。その結果,CYP1A誘導はいずれの試料においても観察されず多環芳香族炭化水素類およびダイオキシン類の溶出はヒメダカの肝臓中CYP1A誘導を引き起こさないレベルであった。しかしながら,試験に供した4試料のうち3試料において強い急性致死影響が観察され,96時間半数致死濃度は溶出液濃度40%以下であった。また,曝露試験を行ったすべての試料において0.45~10μg/mLの低レベルのVtg誘導が観察された。本研究により,複数の化学物質が含有される廃棄物焼却飛灰の溶出毒性評価にヒメダカのバイオアッセイが適用可能であることが示された。