環境科学会誌
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我が国の窒素負荷量分布と全国渓流水水質の推定
新藤 純子木平 英一吉岡 崇仁岡本 勝男川島 博之
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2005 年 18 巻 4 号 p. 455-463

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抄録

 肥料使用量,肉類生産量などの統計データを用いて見積もった,日本のアンモニアの発生量は,肥料から39×103t N y-1,畜産から185×103t N y-1となり,異なる手法を用いた既存の推定結果と同程度であった。土地利用などに基づいて1km×1kmグリッドスケールでの分布を推定し,これと既存の窒素酸化物発生量分布とを用いて,等方的な拡散を仮定して窒素沈着量分布を作成した。窒素沈着量分布は,全国渓流水調査で得られた1278の自然流域における渓流水硝酸イオン濃度の分布と比較的良い対応を示した。更に,森林の樹木の成長と落葉による内部循環および流出過程を考慮した簡単な窒素循環モデルを用いて渓流水窒素濃度を推定したところ,実測値の分布パターンを大まかに再現でき(r=0.65,P<0.001),大気からの長期的な窒素負荷が,人為的な汚濁源のない自然渓流における硝酸イオン濃度を支配する重要な要因であると考えられた。

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