環境科学会誌
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エネルギー集約産業に対する環境税減免の国際競争力・CO2排出削減への影響
松本 健一福田 豊生
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2006 年 19 巻 6 号 p. 527-534

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抄録
 近年,地球温暖化対策として環境税が国内外で計画・導入されているが,その多くで産業の国際競争力の維持を目的とし,エネルギー集約産業に対する税が減免されている。 本研究は,環境税の賦課がエネルギー集約産業の国際競争力に多大な影響を与えるのか,税の減免がそれら産業の国際競争力の影響緩和に効果的に機能するのか,そしてそのような措置がCO2排出削減にどのように影響するのかを分析する。分析には応用一般均衡モデルであるGTAP-Eモデルの構造を拡張したGTAP-Exモデルを用い,全産業に同率の環境税を賦課するケースとエネルギー集約産業への環境税を減免するケースについて,産業の国際競争力ならびにCO2排出削減に及ぼす影響をシミュレーションにより定量的に評価した。 分析の結果環境税導入によるエネルギー集約産業の国際競争力への影響は小さく,また税の減免の国際競争力の改善への寄与は小さいにも関わらず,CO2排出削減率・削減効率を低下させることが示された。そして,全体的に見るとエネルギー集約産業に対する環境税減免はむやみに実施すべきでなく,減免の際には個々のエネルギー集約産業や非エネルギー集約産業CO2排出削減への影響を総合的に考慮して実施することが重要となる。
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