本稿では,環境省淀川流域圏プロジェクトの成果の中から,将来の土地利用変化のシナリオをベースとして種々の環境質の変化をシミュレートする統合モデルの計算結果について,ヒートアイランド現象を例に示す。設定した4つの土地利用シナリオ(二極集中型,東海道集中型,圏域全体分散型,農村回帰型)の考え方について述べた後,各シナリオに対して計算された2035年の交通量・人工排熱量・土地利用状況を入力条件とし,気象・熱収支モデルによってそれぞれの土地利用シナリオに対応する気温の変化をシミュレートした結果について示した。 土地利用シナリオ別に,交通量予測モデルの結果より得られる運輸部門からの人工排熱の変化,土地利用の変化と建物からの排熱の変化をもとにメソスケール気象モデルを用いて夏期気温分布を推定すると,土地利用シナリオによって1℃ 程度の気温変化を広域で起こし得ることが示された。