環境科学会誌
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日本企業における環境行動のメ力ニズム
金原 達夫藤井 秀道
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2008 年 21 巻 3 号 p. 253-259

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抄録

 環境と経済を両立させるためには,経済の主要な主体である企業はいかなる行動を展開するべきか明らかにすること,とりわけ,環境と経済の関係に関する環境行動の組織メカニズムを解明することが不可欠である。本稿では,日本企業の環境行動と組織マネジメントシステムに着目して環境パフォーマンスと経済パフオーマンスの間の因果的関係を解明し,環境パフォーマンス向上のメカニズムを明らかにする。 分析結果より,一連の因果関係プロセスとして,環境規制や市場要請等の外部要因が環境戦略に作用し,その結果,環境行動を強めて環境パフォーマンスの向上が達成され,最終的には経済パフォーマンスを改善させるということが明らかとなり,環境と経済を両立させるメカニズムの一部を明らかにすることができた。 本研究から得られる政策提言としては,持続可能な社会の形成に向けて企業の環境への取り組みを強めるために,企業の環境意識を高め,社会的責任や環境理念を含む環境戦略を形成し,組織の行動全体にその意識が具現化するよう働き掛けることが重要であるということである。そのためには,環境意識の高い市場の形成や社会性の高い取引関係を促進することが必要であり,さらに,市場および社会の意識が強まり,企業の方針にこうした外部の要因に対する反応が組み込まれていくことが重要である。そして,企業がそうした行動を取りやすくするインフラ整備には政府に大きな役割が求められる。

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