環境科学会誌
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ブルントラント委員会発足時における南北対立の考察-秘電に見る委員長と副委員長の対立-
江澤 誠
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2008 年 21 巻 6 号 p. 451-459

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抄録
 環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が設立された背景については,スウェーデンが主体的な役割を担ったことを先に明らかにしたが,委員会発足時における南北対立に関しての本稿は,当時在外公館から政府(外務省)等に宛てて打電された秘電を基にしている。これらの電報は,ブルントラント委員会に日本から参加した委員である大来佐武郎所蔵の資料のなかから筆者が発掘したものであり,本稿は,それらの電文に,新たに発見した電文を加え,地球環境問題の歴史も含めて整理したものである。 ブルントラント委員会の発足時における,環境問題に関しての,先進国と途上国の考えの違いは,委員長ブルントラントと副委員長ハーリドの間の対立として現れたと見ることができる。電文はその対立の具体的な歴史記録であり,多様な解釈が可能であろうが,本論ではブルントラント委員会全体の研究を元に筆者の解釈を示してみたい。 第1節においては本稿の目的について,2節においては正副委員長の選考について,3節においては委員会の性格及び地球環境問題に対する日本政府の認識について,明らかにする。 そして,4節においては,「秘電」を具体的に検証する。第1の電文では,委員長と副委員長の対立と委員会事務局長の人選の様子が,スウェーデン筋の情報として語られる。第2の電文では,「ブ」委員長が,「ハ」副委員長側の委員会支配の意図を破るために,辞任という行動をとる可能性もあることがカナダ筋の情報として語られる。第3の電文では,ブルントラント自身が胸の内を語る。第4の電文では,大来佐武郎委員も含め,12名の委員が出席して開かれた準備会合の報告がなされる。 「おわりに」においては,激しい対立を越えてブルントラントがリーダーシップを発揮して委員会を成功へと導いていく様子,その成功には,北欧諸国の全面的なサポートがあったことを示唆する。
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