抄録
GIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)は,データベース作成ツール,情報解析ツール,情報提供・共有化ツール,意思決定支援ツールとしての機能を持ち,環境科学研究において多面的に利用されている。本研究は,環境科学研究で最も利用されている情報解析ツールとしての機能に着目し,琵琶湖集水域のマザーレイク21計画における適正な土地利用に対して情報提供を行うことを意図した土地利用解析を事例として,環境情報システムとしてのGISの到達点と今後について示すことを目的とした。そのためには,琵琶湖集水域の概要について説明したうえで,土地利用の特性把握,土地利用規制の評価における情報解析ツールとしてのGISの利用例についてそれぞれ紹介し,琵琶湖集水域における土地利用解析を事例として,環境情報システムとしてのGISの到達点と今後について示した。 本研究の成果は,以下の2点に要約することができる。(1)環境情報システムとしてのGISの利用意義と到達点として,GISの情報解析ツールとしての諸機能を利用することにより,琵琶湖集水域の土地利用に関する政策判断へ従来よりも有効な情報提供が可能になることを示した。具体的には,GISを利用して琵琶湖集水域における土地利用解析を行った研究成果をもとに,この地域のマザーレイク21計画における適正な土地利用に対して,どのように情報提供を行うことができるのかについて示した。(2)琵琶湖地域における情報解析ツールとしてのGISの今後の重要な研究課題として,集水域の人間活動の成果が最も顕著に現れる土地利用と湖内環境との関連性について,GISを利用して把握することをあげた。また環境情報システムとしてのGISの今後の展開として,複数の機能の併用により,地域の各主体間での協働活動を推進できる可能性があることを示した。