環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
酸性降下物に対する土壌中和能の簡易測定法
佐藤 一男大岸 弘
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 3 巻 1 号 p. 37-48

詳細
抄録
 人工酸性雨(pH3)を用いたカラム実験の結果に基づき,土壌の酸中和能(ANC)をカラム法よりも簡易迅速に測定する方法を考案した。この簡易法は,(1)炭酸塩,(2)交換性塩基(Ca2+, Mg2+, Na+ ,K+),(3)SO42-吸着(降水中のSO42-と表面OH基との配位子交換)に基づくANCをバッチ法で求める方法である。カラム実験では流出水のpHが約5まで低下した段階で水中のAl3+濃度が急上昇し始めた。この時点を環境被害抑制の限度と考え,ここでは「土壌水のpHが4.7に低下するまでに土壌100gが消費するH+量(meq)」をANCと定義した。ANCに関与する炭酸塩と交換性塩基の総量((ANC)c)は土壌を酢酸―酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.7)で処理し,濾液中のCa2+, Mg2+, Na+ ,K+の濃度から求める。配位子交換しうるOH-量((ANC)a)は土壌に硫酸カリウム溶液を添加して塩酸でpHを4.7に調節し,SO42-の吸着量から求める。(ANC)aの寄与度は降水の陰イオン組成(SO42-の当量分率α)に依存するため,これを考慮してANCを次式から算出する。 (1)0≦α<(ANC)a/(ANC)c+(ANC)aのときANC=(ANC)c/1-α (2)(ANC)a/(ANC)c+(ANC)a≦α≦1のときANC=(ANC)c+(ANC)a  ANCが大きく異なる土壌10試料についてカラム法と簡易法を比較したところ,両者はほぼ同一のANCを与えた(γ=0.98)。本簡易法は操作が2日間程度と迅速であり,α に応じたANCを計算によって求めることができる点で従来のカラム法より優れている。
著者関連情報
© 環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top