環境科学会誌
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3 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 岡 敏弘
    1990 年3 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 1990/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     いわゆる「コースの定理」の提唱者として知られているR .H.コースは,そのような定理の成立しない,取引費用の大きい場合に関しても論じている。そのうちのピグーを批判している部分について,政府による損害補償ルールに関する論争から得られた視点を修正・拡充することによってそれを解釈し,その曖昧さを除去した。その部分に対するボーモルとミシャンの批判についても,上記の視点によって定式化し,不十分な点を補充した。本稿はコースの論文が生み出した問題領域のもっと複雑な部分を検討するための第1歩である。
  • 向井 苑生, 竹俣 一也, 日下 迢, 笹野 泰弘
    1990 年3 巻1 号 p. 13-19
    発行日: 1990/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     つくば市上空大気におけるエーロゾルの光学的厚さτaを,地球大気データ・LOWTRAN6の算出するτaと比較しながら検討する。エアートゥルースデータとして,茨城県つくば市にある国立公害研究所でライダー観測されたエーロゾルの消散係数データを用いる。波長0.53μmに対する高度100mから10kmまでのエーロゾルの消散係数を100m毎に観測したものである。データは1984年3月から1987年5月までの278件で,全て雲の影響を受けていない。これらの消散係数データから求めたエーロゾルの光学的厚さ箱を四季別に分類し,春・夏データとLOWTRAN6の夏モデルの値,秋・冬データと冬モデルの値を比較した結果,τを,地球大気データ・LOWTRAN6の算出するτaと比較しながは観測データ,LOWTRAN6値共に夏より冬の方が小さく,春は観測データとLOWTRAN6値はほとんど同じであることが分かった。また,LOWTRAN6の日本上空大気への適用性を検討するために,笏導出に大きく寄与する視程パラメータの値と観測データの視程との相関を調べた。その結果,春の午後は相関が高く,春の午前,夏の午前,および冬の午後でもある程度の相関が見られる。従って,我々の求めた相関関係を利用することによって,つくば市上空大気のエーロゾルの光学的厚さの近似値としてLOWTRAN6の適用が可能であることが分かった。
  • 小瀬戸 昌博, 平峯 千春, 中嶋 泰知, 北条 憲二
    1990 年3 巻1 号 p. 21-36
    発行日: 1990/01/31
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD,5,30および60μg/kg体重)を生後7週令のC57BL/6(B6,TCDD高感受性)およびDBA/2(TCDD低感受性)マウスに1回腹腔内投与し,TCDDの免疫系に及ぼす影響を,投与後24時間から35日にわたって検索した。 1) TCDDを投与したB6マウスでは,vehicle(corn oil)のみを投与した対照群に比し用量依存性の著明な胸腺重量の減少(胸腺萎縮)がみられた。肝重量の増加以外には,他の臓器重量や体重には有意の変化を認めなかった。TCDD(30μg/kg)投与群では7日後に体重に対する胸腺比重量は最低となり,14日後にはかなりの回復を示し,35日後には対照値に達した。胸腺萎縮は主に皮質リンパ球の脱落によるものであり,その結果,皮質域の狭小化と髄質域の相対的拡大がみられた。DBA/2マウスはB6マウスにみられたような有意の変化を示さなかった。 2) TCDD投与B6マウスの胸腺および脾リンパ球のフローサイトメトリー解析では,胸腺リンパ球はTCDD投与3日,7日後に皮質リンパ球の脱落の所見と一致して,L3T4+Ly-2+サブセットとPNA陽性細胞の著明な減少(百分比・絶対数共に)を示した。L3T4+Ly-2-およびL3T4-Ly-2一サブセットも投与3日,7日後に絶対数では有意の減少を示し,三者共14日後には回復がみられた。L3T4-Ly-2+サブセットのみは絶対数での減少は軽度で,検索期間を通じ有意の変動を示さなかった。百分比では,L3T4+Ly-2+サブセット以外は投与3日後に有意の増加を示した。TCDDは胸腺皮質に分布する未熟なL3T4+Ly-2+リンパ球を主に障害したが,L3T4-Ly-2+リンパ球はTCDDに比較的抵抗性である可能性が示唆された。胸腺リンパ球サブポピュレーションの著明な変化に比べて,脾リンパ球には目立った変化はなかったが,投与3日後にThy-1陽性細胞の減少と表面免疫グロブリン陽性細胞の若干の増加がみられた。 3) ヒツジ赤血球(SRBC)に対する遅延型足蹠反応は,TCDD投与により抑制されなかったが,脾におけるSRBCに対するプラーク形成細胞(PFC)産生は著しく抑制された。さらに,Mishell and Duttonの変法によるinvitro抗体産生細胞誘導系を用いての細胞レベルでの解析では,TCDDはヘルパーT細胞を障害せず,B細胞に作用してPFC産生を抑制することを示唆する結果が得られた。
  • 佐藤 一男, 大岸 弘
    1990 年3 巻1 号 p. 37-48
    発行日: 1990/01/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     人工酸性雨(pH3)を用いたカラム実験の結果に基づき,土壌の酸中和能(ANC)をカラム法よりも簡易迅速に測定する方法を考案した。この簡易法は,(1)炭酸塩,(2)交換性塩基(Ca2+, Mg2+, Na+ ,K+),(3)SO42-吸着(降水中のSO42-と表面OH基との配位子交換)に基づくANCをバッチ法で求める方法である。カラム実験では流出水のpHが約5まで低下した段階で水中のAl3+濃度が急上昇し始めた。この時点を環境被害抑制の限度と考え,ここでは「土壌水のpHが4.7に低下するまでに土壌100gが消費するH+量(meq)」をANCと定義した。ANCに関与する炭酸塩と交換性塩基の総量((ANC)c)は土壌を酢酸―酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.7)で処理し,濾液中のCa2+, Mg2+, Na+ ,K+の濃度から求める。配位子交換しうるOH-量((ANC)a)は土壌に硫酸カリウム溶液を添加して塩酸でpHを4.7に調節し,SO42-の吸着量から求める。(ANC)aの寄与度は降水の陰イオン組成(SO42-の当量分率α)に依存するため,これを考慮してANCを次式から算出する。 (1)0≦α<(ANC)a/(ANC)c+(ANC)aのときANC=(ANC)c/1-α (2)(ANC)a/(ANC)c+(ANC)a≦α≦1のときANC=(ANC)c+(ANC)a  ANCが大きく異なる土壌10試料についてカラム法と簡易法を比較したところ,両者はほぼ同一のANCを与えた(γ=0.98)。本簡易法は操作が2日間程度と迅速であり,α に応じたANCを計算によって求めることができる点で従来のカラム法より優れている。
  • 清水 浩, 青木 陽二, 森口 祐一
    1990 年3 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 1990/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    To choose the best way to solve the problem of the green house effect, it is important to evaluate the techniques which have been proposed to take measures to meet the green house effect. By reviewing papers, making inquiries to researchers on the field of environment and energy, and considering by ourselves, 207 items of techniques have been listed. To make a standard to evaluate these techniques, an inquiries was made to choose important indices among 30 items to evaluate the techniques. From the result of the inquiries, it was pointed out that the important indices are 1) the balance between the amount of the effect and the energy to decrease the green house effect, 2) safety, 3) to suppress new pollution, 4) to be appropriate to the nature, 5) not to leave problems to descendants.
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